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ぽっちゃり風俗が確立された歴史

太っていることを良しとしない時代

風俗で最も稼げる時期は新人期間といっても過言ではない日々、風俗店に取材し、その店の魅力を見つけるのが風俗ライターとしての日課である。
主な取材先は首都圏と中京、関西、九州などの風俗の盛んな地域だ。
もちろん実費を費やしてでも、それ以外のエリアもフィールドワークとしてできるだけ取材に行っている。
日々取材をしていて、複数の風俗店のスタッフの証言から、ぽっちゃりと自負する風俗嬢は増えているという。
彼女たちぽっちゃり風俗嬢が増えた理由は、稼げるから増えたのか、人数が増えたから稼ぎが増加しているのか、もしくはその両方なのかの真偽は置いておこう。

本来なら、「私は太っていない」ということをアイデンティティにしている女性が多いということは、女性向けニュースサイトや女性誌の特集にダイエットの文字ばかり踊っていることを目にしても理解できるだろう。
体型においてのコンプレックスは男女問わず少なからずあるものだ。
こと、風俗店においてもそうで、新人としてデビューさせるときには、どのように効果的な売り出し方をするのかを考えれば一目瞭然である。
従来、お店のホームページや男性向けの風俗情報サイトなどの在籍リストに、NEWや新人アイコンをつけて「ナイスバディのロリ娘」「現役六大生の才女」「人妻塾講師」など、ぽっちゃりを連想させないようにいかに魅力的な肩書を書き加えるかによって指名率が大きく変わるという認識を持っていた、風俗関係者は多くいたと思う。
いや、いわば業界の常識だったといってもよいのかもしれない。

ぽっちゃりが社会に認められた日

しかし10年ほど前から、首都圏のデリバリーヘルス店における在籍リストに「ぽっちゃり」の文字が踊りだし始めたのだ。
今でもその率は着実に増加している傾向にある。

求人広告における「ぽっちゃり」の比率をカウントしているわけではないのだが、大手高収入アルバイトサイトにおいて「カテゴリー」で「ぽっちゃり」がモデルタイプや熟女と並んで掲載されていないサイトはない。

今では一般の女性誌でもぽっちゃり女子に向けた特集は盛んに行われており、ぽっちゃりという言葉がこれほどポジティブに語られるよう市民権を得たのは、この5年ほどの間なのかもしれない。

デブ好きが意外に多いと白昼にさらされた、ある事件

そもそも、いままでぽっちゃり風俗は風俗業界では「デブ専」という言葉が用いていた。
デブという言葉にはどこか蔑視する視線が含まれており、ごく少数の男性客の性癖を満たすものだけのものだった。
これが「ぽっちゃり」という可愛い響きを持つことばによって淘汰されていったのはもはや必然であり、ぽっちゃりという言葉は彼女たちが健全に働ける環境を生み出すためにはまさに必要な発明だったのかもしれない。

1987年にとある事件が起きた。
体重70キログラムから140キログラムまでの女子を集めてデートクラブを開店していた女性が逮捕されたのだ。
このデートクラブは「デブ専」を標榜しており、面白おかしくニュースで取り上げられ、太めの女の子を好む男性がこの世の中におり、しかも専門の組織の経営が成り立つほどニーズがあったことは驚きとともに世の中に知らしめられたのだ。

たしかにネガティブなニュースであるのだが、これによって多くの太めを好む男性が「自分だけではなかったのだ」と知り、「俺はデブ専だから(笑)」と酒の席なので会話をする下地になったのだろう。
逆の立場になる、多くの太めの女性たちにとっても「自分を好む男性がいるのだ」と知ることに繋がったのは想像に難くない。

ぽっちゃり風俗嬢がまさに花開く

太っていてもということではなく、太っているからこそという働き方を考えようどうしても「デブ専」という、センセーショナルでインパクトのある言葉は社会に存在感を示すためには必要だったのだ。
それから30年が経過し、ようやくネガティブな呪いは解かれた。
「デブ専」の下地の上に、いまのぽっちゃり風俗ブームが成り立っていることを、私は書き記さざるを得ない。

いままさに、ぽっちゃり風俗は花開かんとしている。
稼げるのは事実だ。
地味でも堅実に、自分に合う風俗店と巡り合いを求めて求人情報を精査してほしい。
かならず、太めである自分を誇らしく思っている諸先輩同様、輝ける未来が切り開けるはずだから。